この世に万能薬はないと知るべし

飲むだけで、健康になれる。寿命が延びる。ダイエットできる。そんな万能薬のようなあればみな欲しいと思うのは当然です。誰だって健康になりたいし、長生きしたいし、痩せたいのですから。しかも楽をして。好きなものは好きなだけ食べたいし、運動なんてしたくもない。現代人の多くはそう考えているでしょう。

ただそういう安易な気持ちが、様々な健康関連商品やダイエット関連商品につけいられるような心の隙となり、胡散臭い商品が跋扈してしまう要因となっています。これは、お金が欲しいという人間の欲望をたくみにつく、詐欺師の手法に通じるところがあると言えるかもしれません。

そもそも、この世に万能薬などというものは存在しません。それは誰でも簡単にお金を稼ぐような手段がないように。まずはそのことを理解する必要があります。

年単位で重ねてきたような生活習慣の蓄積を、一瞬でチャラにすることなんてどだい無理なことです。人間の体は一定の状態を保とうとする恒常性の原理が支配しており、少しずつしか変わることができません。これは暴飲暴食をしたり、大病を患ったときでさえそうです。しばらくぶりに会った第三者からしてみれば劇的に変わったかの印象を持つかもしれませんが、当人にとってみれば、少なくとも数週間から数ヶ月の、わずかな変化が積み重なった結果でしかありません。

また、体に大きな変化をもたらすような物質というのは元来、非常に大きな危険性をはらんでいます。ついつい人間は自分たちにとって表面上よく見える効果だけを正作用とみなしがちですが、どういうメカニズムによってそれがもたらされているのか、その背景を知らなければいけません。

生物の体というのは絶妙なバランスの上で成り立っており、一部分だけ取り上げて都合よく改変することはとても困難です。どこかをいじればそのしわ寄せがほかのところにもやってきて、人間にとって不都合と思えるような事象も表れかねないのです。これは俗に副作用と呼ばれています。

一般的に正作用が強ければ強いほど、副作用も強くなる傾向があります。つまりそう簡単に「万能」というわけにはいかないということです。

また根本の問題として、定義自体があいまいなことも挙げられます。そもそも健康である、というのはどういう状態を言うのでしょうか。これを正確に定義することは不可能で、本人の気持ち次第でいかようにも取れるものです。よって健康に良いとか悪いということが、漠然としたイメージを形成しているだけというケースが多く散見されます。そして仮に特定の指標で改善が見られたとしても、それが果たしてどれくらの実効的な影響を及ぼすのかということも重要です。

ダイエットについては、以前のエントリーでその定義について触れました。自らにとってダイエットとはなにかということをはっきりさせ、それがどういうメカニズムで達成されるのを把握せねばなりません。そして確かに効果があるとしても、たとえば一日1g、一ヶ月で30g体重が減りますというのでは、実態としてはなんら意味をなさないということです。

これらのことを勘案した上で、ただ摂取するだけで楽して健康になれたり、楽して痩せられたりするような物質は、まだこの世の中には存在しないでしょう。

ちなみに逆もまた真なりで、この世の中で数十年単位の長きにわたって一般に流通してるもので、人体にとって明らかに害をなすようなものはないと言っていいと思います。発ガン性物質などといってよく世間をにぎわせていますが、何を食べていてもガンになるときはなる、ということは押さえておかなければなりません。もちろん混じりけのない純粋な水でさえそうです。またあたかも野菜は体によくて、肉や添加物のたぐいは体に悪いかのようなイメージがありますが、まさにこれもイメージに過ぎません。

どんなものを摂取してようと、年をとるにつれ体はいろいろなところにほころびが生じ、さまざまな病を患ってしまうのです。これは認めなければならない事実です。

そもそもが食事にすべての責任を擦り付けるかのような考えが間違いなのですが、なぜそういったことが起こりがちなのかということを、次の項で考えてみたいと思います。