その『因幡の白兎』は、どこで聞いたの?

出雲大社の参道には、ぜんざい屋さんがたくさんあります。

 

私が入ったお店はこじんまりしていますが、すぐ隣の席でなければ会話の内容まではわかりません。

 

出会う確率は非常に低いのに、なぜこの話を耳にしたのか……。

 

若い女の子が真面目に彼氏に話したストーリーは、こういうものでした。

 

「昔、ウサギがとても悪いことをしたから、島に閉じ込められたんだって。でもウサギは何とかして向こうの岸へ行きたくて、サメをだまして島と陸の間に一列に並ばせて、その上をぴょんぴょん跳んで、あと少しってところで『嘘だよ』って言っちゃったんで、怒った岸に一番近いサメに皮を剥がれて、泣いていたら神様に助けられたんだよ」

 

聞いていた男の子は「そっか~」と納得。

 

私はショック!

 

あのお話って、常識だと思っていましたが、今の若い子って知らないの?

 

いや、それよりもその斬新なストーリーは、どこで読むか聞くかしたの?

 

私も小説を書いていますが、それは思いつかなかったわ(゚Д゚)

 

きっと、たまたまこの子だけが勘違いしているのよね、きっとそうだわ!

 

少し自分を落ちつかせて、また旅の話に戻った二人の横で、おばさんもぜんざいの続きを食べましたわよ。

 

いやはや、いつから『因幡の白兎』は「島流しになった悪徳ウサギが、島から脱走する物語」になったの?

 

モンテ・クリスト伯(こちらは無実ですが)じゃないんだし。

 

それでもぜんざいを食べながら、「『ウサギ神奮戦記』ではこの事情はみんな知っているからと思ってサラッと流したけれど、ちゃんと詳しく書き足した方がいいのかしら? 耳にしたっていうことは、大国主命のお引き合わせなのか?」と悩みましたよ(^_^;

 

今も書き足すかどうか考え中です。

 

 

 

念のために正統な『因幡の白兎』のストーリーを書いておきましょう。

 

隠岐の島に住んでいたウサギがこの国に渡りたくて、ワニザメに「私の一族とあなたの一族、どちらが多いか数を比べましょうよ。この島から気多の岬まで並んでください。私が背中を跳んで数えてあげましょう」と持ちかけます。

 

ワニザメは一族でずらりと並び、ウサギはその上を跳んで渡り、もう少しで土の上に着くというときに「おまえは私に騙された」と言ってしまったとたん、一番近くにいたワニザメにすっかり皮を剥がれてしまいます。

 

痛くて泣いているところへ、八十神(やそがみ。大勢の神々の意味。大国主命の兄さん達)がやってきて、「塩水を浴びて風に当たっていろ」と教えられ、その通りにしたところ、さらに痛くなって泣くことに。

 

そこへやってきたのが、兄さん達から荷物を押しつけられ大きな袋をかついで遅れてやってきた大国主命。

 

泣いているウサギに事情を尋ね、「河口の水で身体を洗い、蒲の花粉を撒いてその上で転げ回ったら治るだろう」と教えてくれます。

 

その通りにすると、ウサギの身体は元通りに。

 

ちなみに大国主命と兄さんズは、美人で有名なヤカミヒメに求婚しに行くところだったのですが、このときウサギは「ヤカミヒメが選ぶのはあなたです」と申しました。

 

そして、そのとおりヤカミヒメは大国主命を夫に選び、その結果兄さん達に殺されそうになり、大国主命は追跡を逃れて根の国(死者の世界)の素戔嗚尊を訪ねることになります。

 

 

 

 

これが現在文献に残る日本最古の縁結びで、因幡の白兎は縁結びの神としては大国主命よりも古いんですよ(^_^)

 

余談ですが、『ウサギ神奮戦記』では、シロナガミミノミコトとなった白兎が出雲へ旅立つ際にワニザメと仲直りをします。

 

皮をむしった後、ワニザメたちは長老のワニザメに「騙されたといっても、それはいたずらの範囲内だろう。それなのに毛皮をむしるとは何事か。すぐにウサギさんに謝りなさい」と大目玉を食らい、毎日交代でこの岸へ来てウサギを探していたのです。

 

シロナガミミノミコトも騙したことを詫び、両者は仲直りをしますが、その際にワニザメが「あなたの毛をむしったのは、私の従姉の嫁ぎ先の三男坊が養子に行った先の長男」と教え、ウサギ神は「ワニザメの親戚ってどこまで続いているのか?」と唖然とします。

 

さらに「国譲り編」でも、危機を助けてくれたワニザメが「あなたの毛をむしったのは、おいらの兄貴の嫁の実家の両親の又従兄弟夫婦の長男」と語り、ウサギ神は改めてワニザメの親戚関係に絶句します(^_^)

 

このワニザメのややこしい親戚関係は、『古事記』で一族の数を比べようと持ちかけられて、ワニザメが島から岬までずらりと並んだことを基にしています。

 

これって、やっぱり書き足した方がいいのかしら?

 

まだ悩んでおります(^_^;

 

 

 

ちなみにぜんざいを食べた後、バスと電車を乗り継ぎホテルへ戻り、またコンビニでおむすびとほうれん草のごま和えを買って夕食としたのでした。

 

このときには、小麦と乳製品の祟りで胃が張り、暴風雨の中を歩いたために気管支がちょっとおかしかったのですが、室温を少し上げて、乾燥を防ぐために濡れタオルをベッドヘッドに置き、早めに寝たのです。

 

おまけに強風の中を歩いたので、悪い左足もカバーしていた右足もひきつるほど痛み、ドラッグストアで湿布を買って一箱全部貼る始末(^_^;

 

いやはや、暴風雨やら因幡の白兎が島に閉じ込められるほどの悪党だったやらで、仰天続きの一日でございました<(_ _)>